2023年11月2日

白衣を着ると集中力が増すことが科学的に証明されていることをご存知でしょうか。エレガントな装いは、創造性や問題解決に不可欠な抽象的思考を高めるということもご存じですか?”

どうやら、服装の持つ意味は重要なようです。交渉術、運動能力、姿勢、自信、やる気、気分、ホルモンレベルなどの多くの点で指摘されています。ノースウェスタン大学の心理学者たちは、この現象を “囲い込まれた認知 “という言葉で表現しています。

衣服は、自己表現とアイデンティティに関する強力なツールであり最も重要な形態のひとつです。

ゴルフのファッションが自己表現という側面から独自のムーブメントを起こしつつあるといわれており、我々としては心強い現象が起こりつつあるようです。ハイクオリティなファッション誌であるGQマガジン誌は最近の号で、ゴルフファッションのトレンドを記事にしています。ほんの2、3年前までは、「ゴルフ」と「ファッション」と「ムーブメント」を一つの記事にすることはなかったのではないだろうかと多くの人々が、おそらく驚きを感じられたのではないでしょうか。

「2023年における最高のゴルフウェア・ブランド」についてGQ誌のようなファッション専門誌が記事にすることは、ゴルフ業界がまだスポーツウェア大手や保守的なプロショップ・ブランドによって支配されていた10年前と比べると、はるかに心がウキウキし、楽しい記事でした。

このようにQG誌の記事は刺激的であり、業界にとって都合良く聞こえますが、ゴルフファッションは少なくとも、コースレベルで、ある程度の規制がされており、ドレスコードの必要性や施行に関して感じる一種のどうなのかなと思ってしまう感情を無視することはできません。

パブリックゴルフコースのゴルフプロと支配人を対象とした最近のNGFの調査では、ほぼ60%がゴルファーのドレスコードは「すべての」または「ほとんどの」ケースで必要であると答えています。

しかし、何のために必要なのだろうか?フロリダ州のKeiser社のゴルフカレッジ(Keiser University College of Golf)では、ドレスコードは「新規ゴルファーとベテランゴルファーの意識をゲームの伝統と一致させる」と説明しています。しかし、ゴルフに関する書籍にもルールブックにも、適切な服装を定めた規定はありません。

では、ゴルフのドレスコードは、文明的で洗練されたレクリエーション活動を求める人々を惹きつける、重要な競争上の優位性を持つものでしょうか? それとも、むしろ産業の成長には妨げになっているのでしょうか? また、パブリックゴルフコースで厳格な服装規定が施行され続けていることは、自己満足による一種の自虐の露呈なのでしょうか? ドレスコードは、私たちの業界がその理由もわからず、そのコスト(あるいはプロフィット)も認識せずに、ただ“それが昔からの、いつものやり方だから”という理由だけで守り続けている、有害な正統派のひとつなのでしょうか?

私たちの調査は、この対立を説明しています。調査結果は、すべてのパブリックゴルフコースでのドレスコードを支持しているコース関係者の44%は、ドレスコードを緩めることで、より多くの人々にとってゴルフがより魅力的なものになると考えています。

驚くことではありませんが、彼らは正しい。ゴルフをしない人の70%近くが、ドレスコードが緩和されれば、コースでゴルフをプレーする可能性が高まると考えています。

ゴルフの服装規定は、哲学的な議論であると同時に、ビジネス上の議論でもあるわけです。特に、ゴルフコース環境での快適なレベルの提供を達成できないことが、顧客離れの主要因であり続けていることを考え併せればドレスコードの扱いは重要なポイントといわざるをえません。

私たちは、服装やファッションの力を、ゴルフの振興と発展に十分に活用していないのかもしれません。

 

デビッド・ロレンツ

National Golf Foundation – The Business Case for Golf’s Dressing-Down (ngf.org)

Reprinted with permission of NGF

以上がNGF(米国ゴルフ財団)のドレスコードの必要性についての興味深い記事です。日本でも何かと議論になります。NGFは、ゴルフの伝統を守るために、公共のゴルフ場で参加者に服装規定を課すことが必要だと考えるゴルフ専門家やGMの約60%の意見を紹介しています。この記事を読むときに日本と米国とでは、会員制倶楽部とパブリックコースの構成比が真逆だという点も考慮する必要があると思います。米国は市営などの公営コースが全体の8割で、日本は会員制とする倶楽部が8割です。本来ドレスコードはゴルフで規定されているのではなくて倶楽部の規範としてあるものですから、ゴルフだからという特別な議論ではないと思います。ただ面白いのは、ファッション誌でも取り上げるようになったゴルフウェアが、ドレスコードの常識(と思っている)を変えるかもしれません。といっても倶楽部の規範としてのTPOを考えたドレスコードはあってしかるべきだとは思います。