2025年1月31日
ゴルフ場ビジネスは、シンプルだが強力な経済原則から生まれます。つまり、すべてのティータイム(スタート予約)は、生鮮食品と同じで一度失われると回復できない在庫といえます。レストランやその他の施設提供型ビジネスと同様に、ゴルフ施設経営では、この現実には、考慮すべき二つの相互に関連する側面があります。
一つ目は、未使用のキャパシティ(空き枠)の純粋な財務上の問題点です。ティータイムが埋まらない場合、ゴルフ施設はグリーンフィー収入を失うだけでなく、ゴルフプレーに伴う収益(食事、飲み物、練習ボール、帽子、手袋など)のすべてを失います。平均的な18ホールのパブリックコースの場合、いちティータイムあたりの総収益(RevPOTT)は、プレー料金の約45%以上の売り上げに相当すると推定されます。これは、おそらくあなたが想像するよりも大きな売上げではないでしょうか。

では、ゴルフ場での無断キャンセルの影響を考えてみましょう。米国の500以上のコースと1,000万ラウンドのデータを元にNGFエグゼクティブメンバーが分析した結果では、キャンセル率は9%であることが分かりました。これは、年間で約10億ドルの機会損失に相当します。[i]

この問題の規模は大きく、敏感さも重要です。レストランが1日のディナーサービスで6人のキャンセルにより収入の5%を失う可能性があるのと同様に、[ii]ゴルフ施設は、何人かのキャンセルにより利益率が低下する可能性があります。

さらに驚くべきことは、在庫の損失をどの程度防ぐことができるか、または少なくとも対処できるかということです。前述の分析では、キャンセルされたラウンドの内わずか11%が、プレー不可能な状況を原因とするものであることが判明しました。つまり、ほとんどの場合は、改善された対策(ティータイムの予約にクレジットカードの要求など)、コミュニケーション(自動発信のSMSリマインダーなど)、およびウェイティングリストテクノロジー(予約待機の顧客への通知)によって削減できるということです。

これらの対策などにより、レストランビジネスはキャンセルによる問題を軽減することができました。新型コロナウイルスによる閉鎖の余波を受けて、予約サイトOpenTableは空き枠の予約や直前のキャンセルの影響を明らかにする教育キャンペーン(Show Up for Restaurants)を立ち上げたほか、レストランが過去の予約活動に基づいて「フライトリスク(無断キャンセル)」を特定できるツールも導入し、予約日が近づくとスタッフが積極的に出席を確認できるようにしました。

しかし、在庫管理は対策の半分にすぎません。もう一つの側面(一見するとより大きなチャンス)は、固定容量のビジネスが顧客との接点全体で収益の可能性を解き放つ方法を再考することです。

ほとんどのホスピタリティビジネスが、統合された長期の顧客ジャーニーを通じて収益を上げる方法を模索しています。ホテルがロビーを社交の場に変えたり、航空会社が搭乗のかなり前にプレミアムな体験を提供したりしています。しかし、多くのゴルフコースは依然として視野は狭く直線的な考え方(予約時間 > ゴルフプレー > スタート)にあり、顧客満足度とビジネスの成長の両方を制限しています。

ゴルフコースでのラウンドは今年も記録的な勢いで盛り上がっているにもかかわらず、先進的な運営者は、ドライビングレンジではテクノロジーを活用した消費の場に進化させたり、食事の提供だけでなく食品や小売業務のウエイトを高めたりするなど、現代のゴルフ経済の変革を受け入れています。しかし、他の可能性も想像してみてください。高額価格を要求する小型の高機能なアップグレードされた乗用カート、プロショップでのクレジット利用者を対象としたラウンド後の特別なコンテスト、ポップアップや地元企業との提携により、より充実したホスピタリティサービスが考えられます。これらは単なる追加機能ではなく、新しい収益源とよりパーソナライズされた顧客関係構築への取り組みです。

重要な点は、ゴルフ運営者としてではなくエクスペリエンスデザイナー※のように考えることです。各タッチポイントは、ラウンドを促進するだけでなく、価値を生み出す機会を提供します。

ほとんどのホテル[iii]や航空会社[iv]の財務健全化で周辺サービスが重要になっているのと同様に、ゴルフのプレー以外のサービスは、在庫の脆弱性を改善し同時に、成長への新たな道を開くことにつながります。競争が激化するレジャー市場で成功するかどうかは、この二重の機会を理解している事業者の肩にかかっています。

注:

RevPOTT(Revenue Per Occupied Tee Time)は、ゴルフ場のビジネスにおいて、1つのティータイムに対して得られる総収益を指します。これは、プレー料金だけでなく、食事、飲み物、練習場のボール、ゴルフ用品などの追加収益も含まれます。

例えば、あるゴルフ場で1つのティータイムに対して得られる総収益がプレー料金の45%増しであるとすると、これはRevPOTTがプレー料金だけではなく、追加の収益も含めて計算されていることを示しています

※エクスペリエンスデザイナー(Experience Designer)とは、ユーザーや顧客が製品やサービスを利用する際の体験を設計・改善する専門家のことを指します。彼らの主な役割は、ユーザーが製品やサービスを利用する際に感じる感情や満足度を最大化するためのデザインを行うこと

具体的には、エクスペリエンスデザイナーは以下のような業務を行います:

ユーザーリサーチ: ユーザーのニーズや行動を理解するための調査を行います。

プロトタイピング: ユーザー体験を向上させるためのアイデアを具体化し、試作品を作成します。

ユーザーテスト: 試作品を実際のユーザーに試してもらい、フィードバックを収集します。

インターフェースデザイン: ユーザーが直感的に操作できるインターフェースを設計します。

ユーザージャーニーマップ: ユーザーが製品やサービスを利用する際の一連のステップを視覚化し、改善点を見つけます。

エクスペリエンスデザイナーは、製品やサービスの利用体験を向上させることで、顧客満足度を高め、ビジネスの成功に貢献します。

Reprinted with permission of NGF

[i] https://www.linkedin.com/posts/noteefy_golf-course-operators-are-missing-out-on-activity-7290068273277059072-c8OO?utm_source=share&utm_medium=member_desktop

[ii] https://press.opentable.com/news-releases/news-release-details/opentable-launches-show-restaurants-initiative-mitigate-no-shows

[iii] https://thynk.cloud/blog/ancillary-services-diversify-hotel-revenue

[iv] https://www.businesstravelnews.com/Transportation/Air/Report-2023-Ancillary-Airline-Revenue-Surges-Over-19-Levels