レジャー白書2024が発売されました。日本のレジャー全般についてはレジャー白書をお読みいただくか、概要は公益財団法人日本生産性本部のホームページ(レジャー白書2024 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部)から確認できます。
本稿はゴルフに限定したレポートですが、ゴルフもレジャー消費品目(種目)ですから、日本人のレジャー消費傾向を念頭に置いてゴルフマーケットの動向を見る必要があります。是非とも概要はお読みください。
2023年のゴルフマーケット
ゴルフの参加率などは速報が発表された時点で紹介していますが、本稿では発表されたゴルフ人口の紹介と直近の10年間に限定してゴルフマーケットの動きをまとめました。最初に訂正ですが、速報ではゴルフ人口をゴルフコースが526万人、ゴルフ練習場を506万人としましたが、今回発表された正式のゴルフ人口はコースが530万人で練習場が510万人です。
まずゴルフ人口全般と日本の総人口の関係を整理する意味から1985年以降の変化を以下の図にまとめました。ゴルフコース人口はピークの4割弱、練習場は3割弱の規模に縮小しています。この比較は今ではあまり意味を持ちません。日本の人口が減少している現在、過去の数字にこだわる意味はありません。現状を知ることと、将来を見据えたマーケット感を持つことが大事です。
FACEBOOKでレジャー白書の取りまとめをしている山口有次桜美林大学教授の「強く同意します」という話は、皆さんも理解されている“アンケートで出た参加率(%)から参加人口を推計しているのだから、仮に今後も参加率に変化がないとしても母数の人口が減少しているのだから参加人口は当然減少する”という単純な確認です。
ここで直近10年間のゴルフ参加率をまとめたのが図1-1です。今回発表された2023年のゴルフコースの参加率は前年の5.3%から5.4%へと0.1ポイント高くなりました。この数字だけを見て、ゴルフ人口(推計)は増加に転じたという結論にはなりません。なぜかは直近の10年間の参加率の変化から判断できます。2年前は5.8%でしたし、5年前の2018年は6.7%で、2015年は7.8%でした。2014年は7.5%でしたから10年間で2.1ポイント少なくなっています。計算の元である日本の人口(白書は15~79歳を対象)が2008年から減少に転じていますから、参加率は低下傾向を続けており、参加率で感じる以上のゴルフ人口の減少(傾向)が続いています。パーセントの数値が少しくらい上にはねても、一瞬の喜びに浸れても、トレンドは変わっていないのです。だからゴルフ振興が重要だということになります。
ゴルフ人口は統計的な良く分からない推計値であり、確実な数字としてはゴルフ場の利用者数(各ゴルフ場の入場者数でもいいですが)があり、利用者数さえ押さえていれば大丈夫と思われる人もいるかもしれません。しかし、利用者数は、ゴルフ人口×ラウンド数(平均利用回数)で説明されます。ゴルフ場の利用者数の動向を説明できるのは、このゴルフ人口と利用回数なんです。ただ結果として利用者数が増えています、減少しましたではなくて、増減した理由はゴルフ人口にあるのか、ラウンド数なのかが分からないと対策を立案できないはずです。料金を下げればいいというような短絡的な対策は、結果として自分の首を絞めるようなことになります。ここがマーケティングの重要性となるのですが、これは別項でとして、今回はレジャー白書の見方。
ゴルフ場の利用者数を説明するラウンド回数ですが、白書の利用回数の10年間の変化は次の図に示しました。
ゴルフ人口が減っているのにゴルフ場の利用者数は言われるほど減ってませんよ、と感じられる理由はこの利用回数で説明されています。白書からは利用回数が増えている傾向が読み取れます。白書の数字にさらに確かさが欲しいならば、業界(ゴルフ場)が独自に調査するしか方法はありません。真剣に考えて欲しいと思っています。もしくは既存のスポーツ庁の調査などからの分析力をつけることです。
当然ですがきちんとした対策を求めるなら、人口減少社会にあって、利用回数が増えている理由が分からないからと、想像だけの無策の策で良いのか?となるはずです。
次は年間のゴルフに関する平均費用です。この年間のゴルフ支出ですが、1回当たりの費用との関係は無視できません。以下の三つのグラフを見比べていただきたいのですが、年間の支出額は増えていますが、ゴルフコースでの1回当たりの支出額は減少傾向にあります。2021年と22年、そして23年の変化は激しいものがありますが、消費者であるゴルファーからすれば様々に要因を挙げると中長期的には“安く”を選択する傾向に変わりはないと考えられます。これは平均的な話であって、ゴルフ場のサービス格差や品質による価格差は拡大すると予測されますから、ここは注意を要します。ただ、顧客が受け入れられる価格の提案が重要なテーマであることに変わりはありません。
ゴルフ練習場は、無人化などの新しい取り組みが注目されていますが、全般的には費用は高額化する傾向が白書からは読み取れます。これも多様化というワードで説明できるのであればこの状態が続くのかもしれません。しかし、冒頭に長期の市況グラフを載せましたが、1990年前後のバブル経済を背景とした社会経済下でゴルフ練習場の参加人口が抜けて多かった時期は、ゴルフコースの参加人口の多かった時期の先行的な動きでもあり、ゴルフの底辺拡大という点で練習場の役割は大きかったはずです。それとも市場が成熟している現在では、ゴルフ練習場の存在意味が変わってきているのか、ここもマーケティングの問題ですが研究する意義はある気がします。
以上がレジャー白書のデータから読み取れる直近10年間のゴルフマーケットの傾向です。
アンケート調査のサンプル数について
何度か書いていますが、例えば今回紹介したレジャー白書2024のサンプル数は3,303です。このサンプル数の持つ意味は、日本人のレジャー全般を見るには十分なサンプル数といえます。ただし、ゴルフコースの場合、参加率が5.4%でしたからゴルフのサンプル数は178と思われます。対象となるゴルフコース人口は推計530万人ですから、この人口規模のゴルフマーケットを把握するためには、一般的な例では98%の信頼度で5%の許容誤差という条件では、必要とされるサンプル数は542とされます。95%の場合のサンプル数は385になります。白書の178というサンプル数は、誤差として10%くらいを考えなくてはいけないことになります。性別とか分類を詳しくしない状態、ゴルフという括りまでであればホボホボの確率で説明できているという程度の理解でゴルフ人口を捉える必要があります。
スポーツ庁の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」サンプル数が4万です。2023年の調査結果ではゴルフコースのサンプル数は2,196でした。この数ですと、誤差は3%くらいと考えられます。信頼度もさらに高くなります。また性別や年齢層別といった細分化した分析も有効と考えられます。
注:レジャー白書2024の価格は8000円+税(10%)です。1000円高くなっています。