ゴルフ関係者はゴルフマーケットの将来に危機感を持たれていると思う。このままゴルフ人口が減少していくとゴルフ場の経営は、ゴルフ練習場は維持できるのか、用品販売はどうなるのか…。しかし、危機感を共有できているだろうかと疑問が出てきます。自分のゴルフ場は生き残るぞ、うちの練習場は大丈夫だ、と思っているのだろうか?現在の国内社会・経済情勢からは、ゴルフ人口の減少はゴルフマーケットの縮小にほかなりません。生き残るぞという意気込みは結構ですが、こうした状況だからこそ産業全体を捉えた取り組みが重要です。ゴルフ文化はなくならない(文化としてのゴルフはなくなりません、当然です)から、と安心していると、時代の流れに足元をすくわれますよ。と、老婆心的発言はしておいて、先ごろ発表されたレジャー白書からゴルフ関連データをまとめました。
ゴルフ人口は増えない?!
発表されたデータを紹介します。調査は2025年2月に実施され、調査対象は15歳から79歳までの男女です。
過去1年間にゴルフをした人(参加率)は、ゴルフコースが5.0%で、ゴルフ練習場は4.6%でした。前年との比較では、ゴルフコースの参加率が0.4ポイント減少し、練習場は0.6ポイントの減少です。直近の10年間の参加率の推移を表にまとめました。
言わずもがなですが近年で最低の参加率です。分かりやすいようにグラフにしました。参加率の低下が止まりません。
増える平均プレー回数に望みですか?
ゴルフ人口が減少していると騒ぐが、ゴルフコースの利用者数は安定的に推移しているじゃないか、という声を聞きます。幾度と紹介していますが、市場規模(利用者総数)はゴルフ人口に(平均)利用回数を掛けた結果です。ゴルフ人口の減少を上回る利用回数の増加があれば総利用者数は現状維持、上手くすれば増加もあり得ます。この種の期待をする関係者もいるかもしれませんが、ゴルファーの立場で考えれば、昨今の事情も加味すればおいそれとラウンド回数を増やすとはいかないようです。とはいえ平均利用者数は重要です。
平均費用の増加をどう解釈すればいいか
先ほど市場規模の公式に触れましたが、金額ベースでの市場規模は年間平均費用をかけたものが推計値とされます。この年間平均費用は、グラフにあるように、ゴルフコースも練習場も増加傾向が続いています。平均活動回数が増えた結果と考えられますが、問題は、費用の増加が今後も続くかどうかです。この点については、所得状況(可処分所得)や自由時間の動向に注意をはらう必要があります。
次のグラフは、ゴルフコースの平均費用を平均活動回数で割った1回当たりの費用の動きです。ゴルフコースでの傾向は右肩下がりです。ゴルファーは「安く」を選択しています。
ゴルフ練習場の平均費用はコースとは逆に増加を続けています。参加率が低下する中で平均費用が増加している状況をどう捉えればいいのか、検証が必要です。参加率が低下するとき費用が高くなる状態は、専門性の高まりから高品質なサービスが求められる結果と考えられますが、高費用化は初心者の参加を阻害することになります。二極化などの対応が十分でなければ、さらに参加率を下げる圧力となりかねません。
ゴルフ人口を推計すると
レジャー白書はアンケートのサンプル数が3467です。ゴルフコースの参加率が5%でしたから、サンプル数は173と推測されます。このサンプル数では誤差が大きくなりますので、推計されるゴルフ人口は目安です。それでも、統計的には誤差が5%から7.46%に増える程度ですから、おおよそのゴルフ人口としてよいと思います。
表にあるように、ゴルフ人口は500万人を割っている可能性は高いです。練習場はさらに少なくなっています。
状況を理解しやすいように1985年以降の推計ゴルフ人口のグラフも紹介します。
最近は、ゴルフコースと練習場の参加人口が競うように低下し、ほぼ同じ数値で推移しています。ところが、1985年からの約10年間は練習場の人口がコース人口を上回っていました。この時期はゴルファーが続々登場していました。ところがバブル崩壊の1990年以降は人口減少となりこの傾向が続きます。それでも2000年を過ぎる頃までは練習場の人口がコース人口を上回っていました。ところが、2000年を過ぎるとコースと練習場の人口は仲良く右下がりで推移しています。バブルを知らない世代がいるわけですから、もはやゴルフを取り巻く環境は変わってしまいました。ゴルフ人口は低下を続けており、人口減少社会にあってはもはや過去の栄光は望むべくもありません。そんなこと言われなくても、と思っていらっしゃると想像しますが、あれよあれよといっている間に今の状態になったのです。活性化対策の効果は何処に行ったのかと聞きたくなります。
レジャー白書などのアンケート調査なんてと軽く考えている人もいるかもしれませんが、厳しい現実がどんどん具体化しようとしています。数字を追っていても何も起こらないのですが、統計情報は、現実とそれほど外れないものです。