~ 女性ゴルファーに注目すると ~

NGF最新資料で解説

米国のゴルフ人口について米国ゴルフ財団(NGF)の最新データを紹介します。
ゴルフ人口の変化の背景にある米国の人口動向については、人口は今後も増加を続けるとみられていますが、2020年の国勢調査(サンセス)では若年人口の減少や人口増加率の低下だけでなく、都市化の進行と、人種の多様化で白人人口のシェア低下が指摘されています。ゴルフに限らず需要(人口)を考える上では、こうした人口要因は前提条件となります。

米国ゴルフ人口の動き

NGFの調査によると2023年のゴルフコースにおけるゴルフ人口は2620万人でした。対前年比では60万人、2.3%の増加です。米国では2015年から2017年にかけてゴルフ人口が減少しています。2018年に増加に転じましたが2014年実績まで回復するのは2020年です。そうです、COVID-19によってゴルフに評価が高まったこともあり(NGFはCOVID-19のボーナスは終わったと言ってます)、以後増加を続けています。毎年1~2%の伸びを見せているわけですが、NGFとしては新たなマーケット戦略に取り組んでいます。それは、ゴルフコース以外のゴルフ施設でゴルフを楽しむOff-Courseゴルファーの取り込みです。これはゴルフコースだけでなくゴルフ用品マーケットの市場開拓も狙いにあると考えられます。

Off-Courseのゴルフ人口を含めた最近のデータをグラフ化するとこうなります。

ゴルフコース人口の伸びは数%で推移していますが、Off-Courseの人口は直近の2年間では25.0%、18.7%と2桁の増加を見せています。また過去2014年から2016年も2桁増でした。NGFだけでなくゴルフ業界は当然このOff-Courseマーケットに注目します。上手くいけば新たな巨大な需要を取り込めます。
ただし日本で考えると、人口に関しては、ゴルフだからではなくて、ベースとなる総人口が米国では増加を続けており、人口減少社会となった日本とは前提条件が違いますから、米国でゴルフ人口が増えているから日本も同じと考えるのは方向性を見誤ると思います。タイガー・ウッズのような有力なトッププロが登場したからマーケットが動くという現象を今の日本でもと望むのは冒険です。女子プロ人気が高まっていますが、女子プロ人気に期待するのであれば、ゴルフ人口が増えたかどうかの検証もすべきだと思います。

ゴルフコースの女性人口に注目

2023年のゴルフ人口は2660万人でした。2%ですが着実に人口は増えていますが、課題も抱えています。一つは日本も同じですが女性ゴルファーを増やすというテーマです。Women’s Golf Dayという取り組みを始めたのは新しい女性ゴルファーを増やすためです。マーケットの拡大は女性ゴルファーが増えるかどうかにかかっていることを強く自覚しているからです。日本はどう見ても増えると良いね、といった感じにおもえてなりません。米国や英国(4ゴルフ団体とも)では、女性ゴルファーを増やす取り組みを協会のプログラムとしてスタートしています。それも何年も前から取り組んでいます。日本は掛け声はかかっていますが、個別ゴルフ施設やメーカー頼りというかゴルフ業界が統一して取り組む仕組みになっていません。リーダーシップはどこに行った?と考えてしまいます。例えばですが、新たな取り組みとして、スコットランドゴルフ協会は加盟クラブでの女性会員を3万人増やすことを活動方針としています。対象は既存の女性ゴルファーかもしれませんが、女性の(ゴルフ)社会進出をサポートしますと言ってるわけです。日本でもこうした発信があってもいいと思います。
ところで米国の女性ゴルファーですが、もともと女性ゴルファーは多くて、ゴルフ人口に占める女性比率は2019年で23.0%、2023年には26.3%までさらに増えています。日本は、スポーツ庁のスポーツの実施状況等に関する世論調査によると、2023年は14.61%でした。概ね半分程度です。これは日本での女性ゴルファーはまだまだ増加する余地があるということになります。

そう考えると目標値が具体化します。普通、目標といえば女性ゴルファーを増やそう!というスローガンではなくて、関係者が共有できる具体的な数値で示されるものです。目標が達成されなくても、実現できなかった原因を探して対策を打つことでより目標に近づけようとするのが、普通の取り組み方だと思います。ゴルフ人口を増やそうなんて取り組みは一朝一夕に実現できるものではありません。何年かかけて達成するものだと思います。PDCAを回しましょう。

では米国では女性ゴルファーはどれくらい増えているのでしょうか。表にもありますが、対前年比で2020年が40万人、21年と22年は20万人、そして23年は60万人増えています。ゴルフ人口は、統計的に有意な調査結果からゴルフ人口が見積もられています。数字の正確さが議論になることがあるかもしれませんが、数字は基準値です。同じ条件で調査は行われているわけですから、前年の結果と今年の結果を比較して出てきた差には理由があるわけです。また、基準値を元に増減が把握できるわけです。変化を見るための統計調査と割り切れば、例えばスポーツ庁のデータを基準とすれば、ゴルフ振興の結果が数字として表れているはずです。もちろん経済情勢の変化や気候といった要素が影響することは避けられませんが、比較材料とすることはできます。つまり、ゴルフ振興対策の結果を評価するツールとして使わない手はないと思うのです。個人見解ですが。

NGFのゴルフ人口調査結果を紹介しました。米国ではこれまで白人の構成比が高かったゴルフ人口ですが、有色人種の比率が高くなっていることから、ゴルフの敷居を低くして黒人やヒスパニックやアジア人のゴルフ参加も高くしようとしています。これはゴルフに限らず様々なビジネス、政治の重要な課題でもあるわけですが、米国も結構問題を抱えているわけです。
ただ、日本が参考にすべきゴルフ振興の一つは間違いなく女性対策です。参考になる対策は是非とも日本でも実施してほしいものです。