- はじめに
2025年10月、Committee for Golf Club Salaries(ゴルフクラブ給与委員会:CGCS)は、2026年度の給与勧告を発表しました。2026年の推奨昇給率は一律4.8%。インフレ率の落ち着きと賃金上昇の停滞を背景に設定された基準です。
CGCSは次の観点を踏まえて給与勧告を策定しています。
- ゴルフ業界の成長と人材確保の課題
- クラブ運営コストの上昇
- 従業員の生活費増大
- インフレ率の安定化と賃金上昇率の鈍化
- CGCS構成団体
- BIGGA(英国・国際グリーンキーパー協会)
- GCMA(ゴルフクラブマネージャー協会)
- PGA of GB&I(英国・アイルランドPGA)
- CMAE(欧州クラブマネージャー協会)
- 2026年 CGCS給与勧告の概要
2026年の勧告では、主要職種ごとに 中央値(median)を基準とした推奨給与額が示されています。中央値は極端な給与に左右されにくく、実態をより反映する指標です。
- 主なポイント
- 推奨昇給率:一律4.8%
- 2025年に導入された「最大+2%の追加昇給オプション」は今回明示されず
- 地域差、クラブ規模、個人の職能評価により調整可能
CGCSの勧告は昇給率の提示にとどまらず、役職ごとの職能価値を明確化し、英国ゴルフ業界全体の報酬体系を整える基準として機能しています。

- 英国ゴルフクラブにおける職階構造
英国のゴルフクラブには、資格制度と経験に基づいた明確なキャリアパスが存在します。一般的な職階は以下のとおりです。それぞれの年収(中央値)を表にまとめました。
- Trainee / Apprentice(研修生・実習生)
- Assistant Greenkeeper(アシスタントグリーンキーパー)
- Greenkeeper(グリーンキーパー)
- First Assistant / Senior Greenkeeper(上級グリーンキーパー)
- Deputy Course Manager / Deputy Head Greenkeeper(副コース管理責任者)
- Course Manager / Head Greenkeeper(コース管理責任者)
- Director of Golf / General Manager(施設統括責任者)

- Deputy Course Managerの役割
Deputy Course Managerは、現場とマネジメントの両面を担う重要な役職です。
- スタッフの管理・教育
- コース管理業務の統括
- 芝の品質維持と改善
- 現場オペレーションの最適化
Greenkeeperより上位に位置し、チームの統率と業務改善を支える中核的存在です。
- PGAプロフェッショナルに対する2026年勧告
CGCSの勧告は、クラブに所属する PGA資格保有者 にも適用されます。2026年の推奨昇給率は他職種と同様に 4.8%アップ です。
対象となる職種
- PGAクラブプロフェッショナル
- ヘッドプロ
- ティーチングプロ

PGAプロフェッショナルは、クラブの“顔”として顧客体験の中心を担う存在であり、専門性・指導力・接客力を重視した報酬設計が求められます。
- 補足情報
- ナショナル・リビング・ウェイジ(NLW)とは
英国政府が定める法定最低賃金で、2025年時点の基準は 時給£11.44。日本と異なり年齢階層に応じて最低賃金が設定されています。

- 日本の技能実習制度との比較
英国の Apprentice(研修生・実習生)制度は、資格取得と雇用に基づく職業訓練制度であり、「技能移転」を目的とした日本の技能実習制度とは性質が大きく異なります。英国では、明確なキャリアパスと職能評価制度に基づいて給与水準が決まります。

- まとめ
2026年のCGCS給与勧告は、英国ゴルフ業界における人材確保、労働環境の向上、クラブ運営の持続性を目的とした内容です。役職ごとに基準が明確に示されることで、雇用主・従業員双方にとって公平性と透明性のある指標となっています。
適切な給与体系の導入は、ゴルフクラブの競争力向上にも寄与する重要な要素であり、CGCS勧告はそのための実践的な手がかりを提供しています。
CGCSのホームページ:Committee For Golf Club Salaries – CGCS
CGCSについて月刊ゴルフマネジメントで紹介した記事:資格と連動する英国の給与制度 ヘウレーカ№36 – Japan Golf Industry News
